Ⅰ.
ーある屋根裏部屋に居候していた学生
生え変わった鶏の翼は輝くのをまっている
しかしもうそれすらもする必要はなくなった
煙草の煙を浴びて
耳と耳と繋げている糸電話からは
すでに血肉の暖かさも聞こえない
砕け散った破片の柔らかさのほかには
カンボジア行きの飛行機のほかにはー
さあもうこうなってみては
昼食の湿ったサンドイッチを食べるのをやめて
海の底を這っていた蟹を食らってしまおうか
真眞珠色の波が来るのを知らない蟹をー
それともこの鞄を
青草の先っぽに預けてしまおうか
キャンディー屋を通り抜けてしまおうか
だが眼の見えない彼の娘はそれでも笑うのだろう
人口の夕日に照らされて輝くのだろう
足がない彼の娘はそれでも
口が聞けるだれかを探し出すのだろう
「あなたは魅力的なひとよ、一日でもいいからあなたをつけてみたいもの」
教室の一番奥に座って寝るメモ帳
寝ることをみるそのトルコ石
しかしもうそれすらもする必要はなくなった